こだわり【2】 ~接合部~
木造住宅の強度は、部材そのものの強さもさることながら、部材間の接合強度に支配されることが多い。
これは、木材は軸材料としては軽くて強い優れた材料であるが、軸方向での繊維(木理)の連続性が断たれるとその性質が失われるからである。
ある程度の大きさ以上の構造や柱と梁の接合など、直角方向に結合が要求される立体的な構造を作り上げるには、部材を軸方向や直角または斜め方向に結合する必要がある。このような結合部での力の伝達と耐力を保持することの難しさが、木材で構造物を作る時の弱点となっている。
継手・仕口
軸組工法の木造建築で最大の特徴は継手(つぎて)と仕口(しくち)である。
継手は軸材を長さ方向に接合し、仕口は互いに直角または斜めの接合部である。伝統的な継手や仕口では、接合する部材を切り欠いて嵌め合わせる方法で、その種類は非常に多い。
本来、部材から部材への力を伝えるものであるが、建方を円滑にする意義も大きい。ここでは、木材同士のめり込み抵抗とせん断抵抗によって力が伝わり、耐力は木材同士の摩擦による外部エネルギーの吸収効果が期待できる。柱などを貫いて小幅板でつなぐ貫構造も、同じように材木同士のめり込み抵抗によって外力モーメントに抵抗させる構造である。
伝統的な継手、仕口、貫構造の欠点は、学力的な計算によって接合部を設計するのが難しく、どれくらいの力に耐えることができるのかが必ずしも保証されないことである。また貫孔やホゾ孔のような切込みや切り欠きによって部材の断面が減少し、耐力の低下が懸念されることである。
プレカットはコンピューターで木拾いをし、部材を専用の機会で加工して、1棟ごとにストックするのが普通である。プレカット継手・仕口の加工精度は手加工に比べてよく、接合強度は大きいが、乾燥が十分でないものを基材に加工すると、加工後から施工までの間に乾燥が進み、現場で上手く嵌(は)まらないことがあるので、乾燥材を使って加工することが特に要求される。
接合金物(モッケン金物)
木造軸組工法の最大の弱点ともいうべき“仕口”(接合部)において、いかに断面欠損を最小限に抑えるかという事が命題であると考える。強い材料を寸分違わぬ精度で加工したとしてでも、その接合部に大きな断面欠損があれば、大きな外力(地震などの揺れ)を受けた場合、かなり高い確率で破断する。
さらに、壁を増やして耐震強度を上げれば上げる程、耐力壁に接する柱には、より大きな力がかかる為、尚更、危険度が増すことになる。
これを解決するのが、金物による接合を採用した金物工法である。一般的な木造軸組工法でも金具は多数使用するのだが、ここでいうところの「金具」はあくまでも“仕口”の補強を目的としたものであり、金物そのものが“仕口”である金物工法とは全く似て非なるものである。柱や梁の欠損は、ボルト穴とスリットだけの最小面積に留め、厚さ6m/mのスチール製コネクターによって、柱と土台を、柱と梁を緊結していくものであり、これは寸法安定性の高いKD材(KD15)や集成材と相まって、長期に渡って強さの発現が期待できる。
また、接合金物は、接合具1個当たりの耐力性能をもとに、接合部を構造計算によってほぼ任意に設計することができる。一定のレベル以上の設計通りの性能が確保でき、粘り強く信頼性が高い。(接合金物は、特に横架材を引き寄せる作用があり、また横架材の木口の形状を単純にすることで、加工の省力化を図り、断面欠損を少なくすることができる。)
さらに、安定性が高くシンプルな形状の金物なので、安定した施工が可能であると共に、金物のラインナップが豊富で、自由設計に幅広く対応できるのも大きな特徴である。