こだわり【3】 ~断熱材~

kodawari3-1断熱材とは、伝導や対流による熱の伝わりを抑えるための部材で、一般に木造住宅においては乾燥した空気や断熱ガスを閉じ込めたマット状あるいは、ボード状のものが使用されることが多い。

空気などの気体は熱伝導率が非常に低く断熱性能に優れている反面、自由に移動できる状態のままでは対流を起こすことから、それ自体が熱を伝える媒体として働いてしまう。部屋の中では暖まった空気は軽いので天井付近に移動し、冷えた空気は重く足元に下りてくることも対流によるものである。また、乾燥している空気は断熱性がよいのだが、水分を吸収し湿度が高くなってしまうと著しく熱を伝えやすくなる。これは、天日に干したばかりの布団は弾力があり温かいが、湿って重くなった布団をかぶってもあまり温まらない事からも感覚的に理解できる。

つまり優れた断熱材とは、乾燥した気体を対流が起きないようできるだけ小さい部屋に閉じ込め、かつその部屋をたくさん持っているものである。
さらに、閉じ込めた乾燥気体が長期間に渡って外部の湿った空気と入れ替わらないような構造であることも又、同時に要求される重要な条件である。

繊維系断熱材

ガラスや鉱物でできた繊維を綿菓子のように成形し絡み合った繊維の間に乾燥空気を閉じ込めたものを繊維系断熱材と呼ぶ。より細かい繊維がたくさん絡み合ったものほど高い断熱性能を有する。

繊維の中に空気を閉じ込めその空気が動かないことによって断熱性能を発揮するのだが、一度前提条件が崩れると性能が大きく落ちてしまう。

繊維の中の空気は完全に独立した部屋に分かれているわけではなく、絡まった繊維の中で連続して存在している。従って、断熱材を取り付ける際に他部材との間に隙間が生じたり、室内側から断熱材の中に水蒸気が侵入したりしてしまうと、断熱材に閉じ込められていた空気が入れ替わって断熱性能が低下したり、断熱材の内部で結露が発生し木材に深刻なダメージを与える腐朽菌の発生を助長したりする。これらを防止するためには断熱材を隙間なく施工し、かつ室内側に全面防湿シートを張らなければならない。しかしながら、現実には徹底されていないように見受けられる。その理由はシンプルで、面倒で手間が掛かるからである。

実際の現場では、室内側に防湿シートを張る手間を省略する為「袋入り断熱材」が使用されることが圧倒的に多い。「袋入り断熱材」とは、室内側に防湿シート、屋外側に透湿防風シートを使い断熱材を丸ごと包んで柱や間柱に取り付けやすいよう袋の左右の側面に「耳」をつけたものである。この「袋入り断熱材」を柱や間柱の間にはめ込み、「耳」の部分を柱に留めつけていくわけだがいくつかの問題点が残されている。

【1】柱と柱の間に筋交いがある場合壁の空洞の形状と同じ形に断熱材を充填する事が困難である。柱の寸法が105㎜角の場合、筋交いの部分は最大でも60㎜しか断熱材を充填することができず壁内に空洞や対流を生じさせやすい。
【2】 「袋入り断熱材」を壁の形状に応じてカットした場合、切り口部分の防湿シートの端部処理が曖昧である。
【3】屋外側の透湿防風シートは湿気を逃がすため穴が開けられているが、穴以外の部分での透湿抵抗が大きく結露を起こしやすい。これは実験でも確認されており、仮に室内側に防湿層を別張りしても同様の結果となる。従って、何らかの原因で断熱材内部に湿気が侵入した場合、壁内結露の危険性が高い。

発泡樹脂系断熱材

断熱ガラスや空気などで発泡させた樹脂をボード状に加工したものと、現場で発泡させながら吹き付けるものがあり、その断熱性能は使われる樹脂の種類、密度、気泡中の気体の種類などによって異なる。また、繊維系断熱材に比べて水蒸気を通しにくいため、断熱材内部で結露を発生させる恐れは殆んどない。

しかし、一方で、樹脂を発泡させる際に使用するガスに、環境破壊係数の高いフロンや代替フロンを含んでいたり、熱や紫外線による断熱性能の経年老化が大きい(初期値の2割程度減)種類のものもある。

kodawari3-2弊社が標準採用している「フェノバボード」は、「フェノールフォーム断熱材」の一つで、建築に使われる断熱材の中では最も高い性能を有している。
フェノバボードの熱伝導率 0.019w/m-k
※数字が小さいもの程、熱を通しにくい
ちなみに断熱性が高いといわれる「硬質ウレタンフォーム」では0.024w/m-k
よく使われている繊維系断熱材の「住宅グラスウール10kg」では0.05w/m-k
その理由は、ノンフロンの高断熱ガスで発泡させた樹脂の中に非常に微細な独立気泡を作り上げ、その中に発泡ガスを閉じ込めることで、極めて高い断熱性能を発揮する。さらにこの気泡膜はガス透過性が極めて低いため、気泡内の高断熱ガスを長期間安定して保存できる。
そのため、他の発泡樹脂系断熱材に比べて、性能の経年老化が非常に少ないという特性を合わせ持っている。または、従来「フェノールフォーム断熱材」の唯一の欠点であった強酸性による釘、ビス、金物等の”錆”に対する懸念についてもPH6の中性に調整することで解決している。

断熱パネル

この様に大変優れた物性値をもって断熱材を構造用合板の外側に貼り付けたパネルに加工し、柱と横架材間に隙間なく嵌め込むことで、2.5倍の壁倍率(最大5.0倍)と、次世代省エネルギー基準をクリアした断熱性・気密性を実現している。
(次世代省エネルギー基準型式認定番号 T170404Aa035004a)
この断熱パネルは、機械化された工場において非常に高い精度で加工され現場に搬入されるため、現場における誤差が殆んどなく、施工者による技能的な優劣や時間、天候などの外的要因に左右されない。
常に高い水準の性能がバラツキなく普遍的に供給することを可能にする工法である。